INFOMATION
みのり通信2018年6月号
INFOMATION2018.06.01
院長より
紫陽花の美しい季節になりました。雨が降ると鬱陶しいものですが、雨に濡れた紫陽花に風情を感じるのは日本人の感性なのだと思います。自分が育った昭和の時代を懐かしく思い出します。家の前の道路はまだ舗装されていなくて、夏の夕方には暑さをしのぐために打ち水をしたり、子供会でお月見や綱引き大会があったり、地域では盆踊りもありました。子供たちもお稽古事もさほど忙しくなく、学校から帰ったら家で過ごす時間がたっぷりあったように思います(ただ、その頃の父親達は猛烈に働いた世代でしたが)。 振り返って今はどうでしょう。スーパーやファミレスに行けば10時過ぎて就学前の小さい子を目にすることも多く、これでは朝が起きられないだろうと心配してしまいます。昔と今ではまるで時間の感覚が違います。若い世代のコミュニケーション能力も危惧されます。SNSは便利ですが、単語の羅列です。このことに関してはこのページの最後で取り上げますので、子供さんのいらっしゃる方はぜひお読みください。 ところでこの春、二女が大学生となり、パソコンを購入しました。その際、何かのキャンペーンだったらしく、野球観戦のチケットを貰いました。連休中に20数年振りにヤフオクドームに行ってきました。とても賑やかでまるでショーのようでびっくりしました。主人が楽しそうに「今日、内川の2000本安打が出るといいな~」と言っていましたが、私は「その人誰?」という始末。3時間近く座っているとお尻が痛くなってきて、延長戦は嫌だなと思いながら見ていました。ビールを売る可愛い女の子がたくさんいて、背中に何キロ背負っているのかしら、階段の上り下りで足が鍛えられるな~、おじさんがターゲットだからかわいい子が多いな~、などとウオッチングを楽しんでいました。試合は残念ながら逆転負けでした。自分が50代となり、監督の仕事の重みを感じずにはいられませんでした。シーズン中は何度も胃が痛くなるような思いをするのでしょうね。 今年に入って歯科医師になって3年目の長女が時々雑用を手伝いに来ています。普段は九大病院で働いており、臨床の腕はまだまだです。腰まで届くような長い髪をしていたのですが、バッサリ切りました。がん治療の副作用で髪が抜けた方のためのカツラ用に伸ばしていたそうです。最低30センチ必要であるため、1年以上かかったようです。美容院から父親の携帯に写真を送ってきました。父親は始め何のことか分からなかったようですが、私が理由を言うと、うれしそうな顔をしていました。待合室にも我が家の子供たちが成長して不要になった洋服やおもちゃ、文具など置いています。赤い貯金箱に入れてくださった皆様のお志を日赤に2万円以上寄付することができました。小さなことでも人のために役に立つことを日々心掛けていきたいと思っています。
お役立ち健康情報 ~唾液について~
超高齢化社会といわれて久しくなります。寝たきりにならないための工夫はもちろん必要です。私たちは歯科という立場から、今回はまだ世間であまり取り上げられていない「口腔乾燥症」についてお話します。 最近幅広い年代の方の安静時唾液のデータを集めているところです。ご高齢の方はお薬の影響もあり、本当に唾液量が少なくびっくりしました。口がカラカラして夜中に目が覚めるという方もおられました。けれども30,40代でも意外と唾液量が少ない方もいらっしゃいました。このような方は「噛みしめ」がとても強いです。噛みしめによって、唾液が出る部分が筋肉によって圧迫されます。そのために唾液が出にくくなっているのです。
資料にもありますように、唾液は活性酸素を除去したり、免疫能を上げるなど、様々な効能があります。ですから唾液が出ないということは非常に問題があるのです。 そこで先月号でご紹介した「近赤外線」を10分間当ててみました。ほとんどの方で、唾液量がアップしました。歯周ポケットをきれいにすることも大事ですが、唾液が出るようにするケアもとても大切だと感じました。けれども、「ビームオン」という機械は佐賀県の歯科医院には1台しかありません。しかも度々赤外線を当てるために通院してくださいというお願いも難しいです。そこで、知り合いの会社に頼んで、ホームケア用の機械を作ってもらっています。7月には試作品ができるらしいので、患者様にご協力していただき、データを集める予定です。
–引用—————–
『致知』2016年12月号記事より
スマホと学力低下の恐ろしい関係
~7万人の子供の脳を調べて分かったこと~
スマホを使っている子供たちは学力が低下し続ける――。この恐ろしい事実をご存じでしょうか。これは脳科学で知られる東北大学教授・川島隆太さんの研究で明らかになったものです。LINEやフェイスブックなどのSNSは、いまや現代人にとって欠かせないツールであり、それは子供たちも同じです。しかし、その世界に浸りきっていると、脳は大変なダメージを受けるというのです。SNSは人間の脳の働きにどのような影響を与えるのでしょうか?
SNSで記憶が消える?
SNSをやっていると脳に抑制が掛かることが分かっています。見た目には手を動かしたり、頭を使ったりして脳を刺激しているように思えて も、測定すると抑制、つまり眠った状態になります。
そのことはLINEの文面を見ていただければ理解できると思いますが、極めてプアなコンテンツしか出てきません。「お昼何にする?」「カレー」「どこ行く?」といったように、まるで幼稚園児レベルの会話しか続かないんですね。物を考える人としての脳は積極的に寝てしまっている。ある意味、とても怖いツールでもあるんです。
僕たちは7年間、仙台市の7万人の子供たちの脳を追いかけて調べていますが、スマホやSNSの利用と学力との関係が明らかになってきました。そこで分かったのは、これらを使えば使うほど学力は下がります。それは睡眠時間や勉強時間とは関係ありません。
例えば、家で全く勉強していない子供たちのグループがあります。スマホをいじらない子はある程度の点が取れるのですが、その先、使い始めると睡眠時間は一緒でも、そこから点が下がっていくんです。要はスマホを使ったことによって、脳の中の学習した記憶が消えたということです。
仙台市の子供たちのデータですから、一般則ではないかもしれませんが、例えばSNSを1時間やると、100点満点の5教科のテストで30点、1教科当たり5点分くらい点数が下がります。1時間で5点ですから4時間使えば20点下がるわけですね。
そこから分かるのは、本来なら総合点が高いはずの子供たちが、SNSをやっているばかりに勉強した大切な脳の記憶が消えているという現実です。
SNSはよくコミュニケーションのツールという言い方をされますが、SNSでやりとりをする相手が人間ではなく人工知能を備えた機械であっても、そうとは気づかない、人だと思ってやりとりをしてしまうという具体的なデータもあります。つまり、人と人とのコミュニケーションが担保されていないわけです。
人間の脳を活性化させるもの
いま、子供の脳についてお話しさせていただきましたが、素読によって脳が活性化するのは、お年寄りも同じです。僕たちはこれを学習療法と呼んで今日まで続けてきましたが、高齢になって脳機能や生活の質が低下する一番の要因は、記憶の容量が小さくなることにあります。
記憶の容量とは、作業をする時の机に例えると分かりやすいと思います。若い時は大きな机を持っているのでパソコンやノートを置いたり、資料を並べたりして自由自在に作業ができます。ところが、年をとると机が小さくなっていって最後にはノート一冊すら広げられなくなってしまう。若者でも、SNSばかりやる人はこのような状態になります。
この狭くなった机を何とか広げられないかというので、認知症のお年寄りに、美しい日本語の文章を声に出して読ませるトレーニングを取り入れました。認知症は薬を飲んでもよくはならないんです。悪くなるスピードを遅らせるだけです。
ところが、素読を続けると劇的な変化が見られます。認知症の進行が止まるだけではなく、改善していくんです。記憶の容量が大きくなり、先ほど申し上げたような脳そのものが可塑的な変化を遂げる。だから僕たちの中で素読はまさに劇薬扱いなんですね。
お年寄りの中には素読よりも数を扱うことを好む人もいますので、単純計算によるトレーニングも組み合わせていますが、こういうシンプルな方法でも続けることで確実に改善に結びついています。
–引用終わり—————–
この原稿を書いていた5月20日の新聞に「3~6歳半数スマホ常用」という記事が掲載されていました。昨年の調査で3~6歳児の半数以上が「ほぼ毎日」か「週2~4回程度」スマホなどで動画視聴やゲームをしているという記事です。電車に乗っている時など子供たちがスマホでゲームをしている姿をよく見かけます。ぐずるよりはよいと若い親は思うのでしょう。
社会人になって数年して、院内での連絡のためにポケベルが出てきた時も驚きましたが、携帯、スマホ等々、今や世界中どこにいても誰とでも瞬時につながることができる時代となりました。科学技術の進歩には目を見張るものがあります。けれども、負の面も理解する必要があります。私もPCの前に座ると本来探していた資料以外にもついついいろいろなものを見てしまい、時間がたってしまうことも度々あります。インターネットのなかった時代には得られる情報は少なかったけれども、もっと有意義な時間の過ごし方をしていたと思います。ましてや子供たちの学力の低下にもスマホが関係しているということに大人がもっと危機感を持つことが必要です。「素読」に関しての本を買いましたが、積読になっているので、認知症予防のためにも実践していこうと思っています。